自然を知ろう、学ぼう、楽しもう。

写真の水草がきれいに育つグラスアクアリウムも、60cm水槽の美しいレイアウト水槽も、共通しているのは「小さな自然の生態系が構築」されている、ということです。

その仕組みを理解し、試行錯誤を重ね続けることが、あなたを自然の良き理解者であるアクアリストへと成長させてくれます。

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自然の川の景色。目に見える水の量は全体の何%くらい?

自然の川を流れる水。砂利や周囲の緑の中を流れていきます。当然、砂には水が染み込みます。その砂の中には小さな微生物や水生生物の幼虫、またドジョウなども棲んでいます。川の流れは目に見える部分だけではなく、砂の中にも流れています。写真にあるような「目に見える水の流れ」は川の砂の中まで含めた全体の水の量のおよそ30~40%と言われています。

自然の川は、このように川底の砂や周囲の植物を使い、様々な生物、微生物の力を借りながら水をきれいに保ちながら上流から下流へと運んでいます。都心で見られるようなコンクリートで囲まれた川では、当然、このような働きは起きにくくなります。

グラスアクアリウムという小さな生態系づくりを体験したあとは、もしかしたらこのような景色も今までと違って見えるかもしれません。

グラスアクアリウムの生態系の遷移

グラスアクアをスタートして、1ケ月、3か月、、、そして1年、と経過していくと、それぞれの水草は大きく育ったり、衰退したりを繰り返します。それを「遷移」と言います。「変化」が形を変えることだとすれば、「遷移」は形が変わり続けていく、と理解してください。その変化は自然と同様、環境の影響を受けるもので、その環境・生態系を維持していくのはあなた自身なのです。一つ言えることは、これも自然と同じように、一つの生態系は1年以上、維持することが可能、ということです。

バランスが取れた状態のグラスアクアは水草が繫栄し、コケも生えず、水質も良好に保たれます。ではその自然の循環の仕組みを説明しましょう。

バランスの取れた水槽の中には3つの生態系の『生命共同体』がいます。生態系を維持するのに欠かせないのは「水草」です。水草は魚の出す二酸化炭素を光合成によって酸素や、炭水化物に変えてくれます。根から水を吸うことで砂利のなかにも緩やかな流れを生み出します。

古くなった枯葉や魚の糞、エサの残りは砂利の中のバクテリアが分解し、水を浄化するとともに水草の栄養にもなります。魚たちは水草が出す酸素を吸って呼吸し、水槽内にゆるやかな水流をつくり出します。

 

これらの循環は、私たち人間が植物たちから受けている恩恵と同じで、グラスアクアの小さな生態系づくりは、「小さな地球をつくっている」、そんなイメージかもしれません。

ろ過について

小さなグラスアクアの中では常に自然のろ過が行われています。水草が健康に育っていると、砂のなかに広く根が張られます。この根から水草は水を吸い上げ、それが砂をろ過材代わりにしたろ過システムとして機能します。底に敷く砂はそれを考えて水の通りが良く、水質に変化を与えないものが理想です。

もう一つのろ過はバクテリアたちによる生物ろ過、です。

魚など生きものがいる限り、必ず糞や老廃物などいわゆるゴミが水槽内に溜まります。これらは有害なアンモニアを水槽内に発生させます。人間も同様。人間は食べたものを体の中で分解し、体内で発生させた有害なアンモニアは尿として体外に放出します。しかし、水槽ではそうはいきません。水槽内に放出された有害なアンモニアは、「硝化細菌」たちがつぎつぎに毒性の低い物質に分解していき、最終的に水換えや水草が吸収します。

自然を創っている、ということを常に心に置いて。

「簡単に楽しみたい」という考え方は、アクアリウムと自然を考えたときには、変える必要があるかもしれません。小さな生態系づくりに失敗はつきものです。それまでうまくいっていた環境が急に変化することもあれば、生きものたちに影響が出るかもしれません。

試行錯誤こそがアクアリウムという趣味の本当の楽しみであり、マニュアルにすべてできないこと自体が、自然を楽しむ趣味という証かもしれません。本ホームぺージではみなさまから寄せられる質問をできる限りお答えしていきますが、それでも、最後は「自然の良き理解者である」みなさまアクアリストの手に、小さな生態系の維持・成長は委ねられるのだと考えています。