メダカを飼育していると、目立った外傷などもなく急激に痩せてしまい、最終的に衰弱して死んでしまう通称”痩せ細り病”が見られることがあります。

ジェックスラボラトリーは、奈良女子大学 保智己名誉教授と共に痩せ細り病を発症したメダカの体内でどのような異変が起こっているのかを明らかにする調査を行いました。

図1.痩せ細り病を発症したメダカ

1. 痩せ細りメダカ。飼育2週間~1ヶ月ほどで急激に痩せていき、フラフラと泳ぐようになります。

 

その結果、痩せ細り病を発症したメダカの腎臓組織において寄生虫や抗酸菌(Mycobacterium科)と呼ばれる細菌の感染が確認されました。

またその他の各種器官(エラ、肝臓、消化管、筋肉、生殖腺)では痩せに繋がるような病変は確認されませんでした。

長らくメダカ飼育においては痩せ細り病が問題となっていますが、本症について詳しい原因はわかっておらず、有効な対処法も確立されていない状況でした。

今回明らかになった本研究の情報を元に、痩せ細り病の予防・治療に有効な商品の開発が期待されます。

本研究は、令和5年度日本水産学会秋季大会にて発表しました。

 

概要

メダカは古くから観賞用に飼育されている魚で、近年では品種改良が進み人気が高まっています。一方メダカ飼育においてメダカが顕著な外傷もなく短期間で著しく痩せ、最終的に衰弱死してしまう、通称痩せ細り病が問題になっています。同症状を発症したメダカの治療は非常に難しく多くが死に至ることから、有効な対処法を検討する必要があるものの、これまで痩せ細り病の詳しい原因は明らかになっておらず、水質悪化、細菌・寄生虫による疾患、先天的な内臓疾患等、諸説あるとされてきました。そこで痩せ細り病の原因を明らかにすることを目的とし、同症状を発症しているメダカの組織切片を作製し、健康なメダカの組織像との比較観察を実施しました。

 

研究手法と成果

ヒメダカ(Oryzias latipes50匹を室内水槽で飼育し、その中から痩せ細り病を発症したメダカ10匹を一斉に回収しました。同症状を発症したメダカは麻酔処理後、各種薬品・パラフィンを用いて固定し、組織切片を作製。また光学顕微鏡を用いて観察し、同様の条件で作製した健康なメダカの組織切片と比較しました。

結果、痩せ細り病を発症したメダカ10匹のうち8匹の腎臓組織で寄生虫のような像が確認されました(図2,3)。

2.3. 痩せ細り病メダカの腎臓で観察された寄生虫像(▼部分)

図2.HE染色、顕微鏡倍率×400(左)
図3.HE染色、顕微鏡倍率×200。腎臓の尿細管中に寄生虫のような像が見られる(右)

 

また寄生虫以外にも、腎臓組織に抗酸菌(Mycobacterium科)の感染が疑われる病変が観察され、実際に抗酸菌の存在も確認することができました(4,5)。

図4. 痩せ細り病メダカの腎臓で観察された病変(▼部分)

4.HE染色、顕微鏡倍率×200。腎臓の組織中に抗酸菌感染の特長である肉芽腫の形成が観察されました。

 

図5. 痩せ細り病メダカの腎臓で観察された抗酸菌(▼部分)

5.チールネルゼン染色、顕微鏡倍率×1000。抗酸菌が薄い赤色に染まっています。

 

今後の展開

今回の調査から、メダカの痩せ細り病は腎臓への寄生虫もしくは抗酸菌感染が原因である可能性が示されました。抗酸菌(Mycobacterium科)は土壌や水系など環境中に広く生息する細菌です。市販の魚病薬でも対処が難しいということもあり、現状有効な対処法がない状況です。これを踏まえて今後は、感染経路の調査や、原因に応じた効果的な予防方法の探索を行っていく予定です。