私たちの旅が始まってから3時間後、ついにアンパシンダバ半島南部を流れるベザヴォナ川の河口が、私たちを迎え入れてくれました。船はマングローブの密林を縫うように奥深くへと進みましたが、やがて水深が浅くなり、私たちは船を降りて歩き始めました。
上陸すると、好奇心と驚きの入り混じった眼差しで、村人たちが集まってきます。特に幼い子どもたちは、これまで「バザ(外国人)」を見たことがなく、私たちに興味津々でした。その純粋な瞳と、25年前に最後のフランス人入植者がこの地を去ったという昔話が、私たちの冒険をさらに彩りました。
さっそくキャンプを設営し、本格的な調査活動を開始しました。地表棲の爬虫類や両生類を捕獲するためのピットフォールトラップを設置。しかし、捕獲できたのは小さなカエル1匹のみ。ただ、周囲の竹林には思わぬ発見がありました。
ここでは、Exo Terraブランドマネージャーのエマニュエル・ヴァン・ヘーゲンにちなんで命名された「ヴァンヘーゲン・ヒルヤモリ(Phelsuma vanheygeni)」の姿を観察することができました。とても興味深かったのは、これらのヤモリが様々な昆虫の下に潜み、糖質のような甘い分泌液を狙っているようでした。
さらに奥へと進むと、マダガスカル最大級のカメレオン、ウスタレカメレオン(Furcifer oustaleti)に遭遇。この種は湿潤な海岸低地から乾燥林まで幅広く棲息しています。そして、鮮やかな体色が特徴のパンサーカメレオン(Furcifer pardalis)もその姿を見せてくれました。続いて遭遇したのは、オスアカウシサシヘビ(Ithycyphus miniatus)がカエルを狩るという、野生の厳しさを目撃する濃密な瞬間でした。
キャンプに戻ると、ナゼール氏が腕を振るったフレンチフライの香りが漂っており、村人たちの注目の的になっていました。「エメリル・ライブ」(アメリカの人気料理番組)さながらの盛り上がりを見せました。村長も食事に加わり、私たちのこれまでの旅の話や翌日の計画に熱心に耳を傾けてくれました。
夜が更けると、昼間とはまったく異なる世界が広がります。巨大なクモ、果実や虫を探し回るマダガスカル ハリネズミ(Setifer setosus)、魚鱗模様のヤモリ、そして木に溶け込むようなカモフラージュ能力を持つヘラオヤモリ属(Uroplatus)が出現。これらの夜行性の生態は、私たちの夜の探索を刺激的なものにしました。
翌朝、満ち潮のタイミングに期待して、アンカーを下ろした船へと戻ります。村人たちに見送られながら川岸を出発。幸運にも水位は十分で、無事ノシ・イランジャ島へと旅立つことができました。
この2つの島は砂州で結ばれており、ノシベ本拠地からは補給物資も届けられていました。ここでは、アフリカバンケン(Centropus toulou)がヒロオヒルヤモリ(Phelsuma laticauda)を食しているシーンを目撃し、この鳥がヤモリを狩ることを初めて確認しました。
続いて訪れたのは歴史的な響きを持つロシアンベイ(Russian Bay)。1905年の日露戦争時にロシア軍艦の乗組員による反乱があったという逸話が、今もなおここに息づいています。当時の難破船の一部がいまだに残っており、現地の景色に歴史の重みを添えていました。
出発前に若いマダガスカルイグアナ、キュビエブキトカゲ(Oplurus cuvieri)が姿を現しました。イグアナ科は主にアメリカ大陸に分布しているため、マダガスカルに存在すること自体が生物地理学上の謎となっています。
その後、アンバリハへ。干潮だったため、最後は徒歩での移動に。村で唯一の店につくと、2004年の訪問時の記憶が蘇ってきました。ここは補給や荷物の一部を預けることのできる信頼できる拠点であり、これからの旅を楽にしてくれました。