POGONA VITTICEPSフトアゴヒゲトカゲ
フトアゴヒゲトカゲはオーストラリア原産の爬虫類です。フトアゴヒゲトカゲの学名と一般名は、興奮やストレス、または相手を驚かせたい時に膨らみ暗くなるとげ状の「ヒゲ」(古代ギリシャ語で「ポゴン」)に由来しています。とげ状の三角形の頭部やとげのある胴体については、見た目は恐ろしく思えますが、実際には触ると非常に柔らかいです。
彼らの比較的小さな体と温和な性格、特に注意を引くことが好きな点から、フトアゴヒゲトカゲは初心者から上級者まで、また子供にも人気のある爬虫類となっています。さらに、夜行性動物とは異なり、フトアゴヒゲトカゲは飼い主が起きている時間に活動しています。
フトアゴヒゲトカゲはアメリカやヨーロッパで30年以上にわたり飼育されてきました。オーストラリアでは1960年代にすでに在来の動植物の輸出を禁止しているため、現在入手可能なフトアゴヒゲトカゲはすべて何世代にもわたって飼育・繁殖されたものです。
フトアゴヒゲトカゲの幼体は、自然な色や模様だけでなく、多彩なカラーモルフも簡単に手に入れることができます。デザイナーモルフと呼ばれる品種は、年々そのバリエーションが増加し続けています。当初は色や模様の変更に重点が置かれていましたが、最新のモルフでは鱗の形状まで異なるものが登場しています。
多くの魅力的な名前が付けられたクールなモルフが存在し、たとえば、サンドファイア レッド(Sandfire Red)、サンドファイア イエロー(Sandfire Yellow)、サンドファイア パステル(Sandfire Pastel)、タンジェリン(Tangerine)、ハイポ メラニスティック(Hypo Melanistic)、ウィットブリット(Witblits)、シトラスタイガー(Citrus Tiger)などがあります。そして、選択的な繁殖によって色だけでなく、特定の形態的特徴(例えば大きさや鱗)も強調されるようになりました。例として、ジャーマンジャイアント(German Giants(平均的なフトアゴヒゲトカゲよりも大型))、レザーバック(Leatherback(背中が滑らかで、トゲがない))、シルクバック(Silkback(滑らかな肌))などがあります。

歴史
フトアゴヒゲトカゲ(Bearded Dragon)は1926年にエルンスト・アールによって「Amphibolurus vitticeps」として初めて記載されました。
1982年、ストールはAmphibolurus属のグループの再分類を提案し、いくつかの種を新しい属ポゴナ(Pogona)に配置しました。この新しい属Pogonaの一般的な受け入れは当初は慎重でしたが、1999年にManthey & Schusterが彼らの本「Agamen」でcentral bearded dragonをPogona vitticepsと呼称した後、他の著者もこれを採用し始めました。
1960年代後半にオーストラリアが爬虫類の輸出を禁止したため、市場に出回っているすべてのフトアゴヒゲトカゲは何世代にもわたって繁殖されてきた飼育個体です。主にドイツ、ベルギー、オランダの有名な愛好家たちによって繁殖が行われてきました。1980年代には、アメリカの複数の爬虫類ブリーダーがドイツから飼育下繁殖のフトアゴヒゲトカゲを輸入し、アメリカ国内でもブリーディングコロニーが確立されました。これにより、フトアゴヒゲトカゲの商業的な繁殖が一気に発展しました。
そして特に有名なブリーダーの一人が、サンドファイヤードラゴンランチ(Sandfire Dragon Ranch)のロバート・メイルー氏です。彼はフトアゴヒゲトカゲの大規模な繁殖を始め、さらに選択的な繁殖を通じて、いくつかのカラーモルフを確立することにも成功しました。

特徴
フトアゴヒゲトカゲは、アガマ科(Agamidae)およびアンフィボルリナエ亜科(Amphibolurinae)に属しています。
広い三角形の頭部と、その頭から全身にかけて並ぶ棘状の鱗によって“失われた時代のドラゴン”を連想させるような外見が特徴です。
その鋭い爪のおかげで、フトアゴヒゲトカゲは硬く詰まった砂や岩の環境でしっかりとグリップすることができます。
日光浴(バスキング)時、温度が高くなりすぎると口を大きく開けて体温を調節します。
首のヒゲ状の部分が名前の由来で、威嚇・縄張り行動・求愛行動の際に膨らませます。
優勢なオスは喉元のヒゲを黒色(ジェットブラック)に濃くさせ、頭を上下に振る(ヘッドボビング)ことで自分の優位性を示し、メスにアピールします。
メスは交尾を受け入れる際、前脚をくるくる回すようなアームウェービング(手を振る動作)で応えます。
バスキングスポットの主張として、優位なオスは他の個体の上に乗って場所取りをする場合もあります。
オス・メスともに全長約40~60cmに成長します。
孵化直後の個体は約8~10cmが平均的です。
約14~18か月で性成熟に達します。ただし、その前にオスとメスを完全に見分けるのは難しい場合があります。
オスとメスの見分け方
尻尾をそっと持ち上げて付け根を観察します。
オス:肛門の後ろ(尻尾の付け根)に左右2つの膨らみがある。
メス:肛門の後ろに1つの膨らみが中央にある。
ライト越しの観察
尻尾に懐中電灯などの光を当てて、上から透かして見る方法があります。オスは2つの膨らみ、メスは1つの膨らみが確認できます。
大腿孔(フェモラルポア)の観察
内股部分にあるフェモラルポアは、オスがよりはっきり主張されます。メスはオスほどくっきりせず小さい傾向にあります。
分布
フトアゴヒゲトカゲはオーストラリア中部の固有種であり、主にオーストラリア東部の半乾燥地帯に棲息しています。ニューサウスウェールズ州、ノーザンテリトリー(北部準州)、クイーンズランド州、南オーストラリア州、そしてビクトリア州などで見られます。

野生では
フトアゴヒゲトカゲは昼行性の爬虫類で、乾燥した岩場や半砂漠地帯、乾燥した開けた森林地帯に棲息しています。
フトアゴヒゲトカゲは地上生活から半樹上生活を営んでおり、朝と夕方には木の幹や切り株、枝、フェンスの支柱や岩場で日光浴をしている姿が見られます。主に昼行性ですが、一部の個体は夜遅くにも、蓄積した熱を岩場で吸収するためにバスキングをしていることがあります。一日の最も暑い時間帯には、極端な暑さから身を守るために巣穴や洞窟に避難します。また、夜にはこれらの洞窟や巣穴を使って捕食者から身を守ります。
フトアゴヒゲトカゲは、温かいバスキングエリアから涼しい場所に移動することで体温を調整します。また、皮膚の色合いを暗くして(より多くの熱を吸収するため)、または明るい灰色や茶色に変えて(太陽光を反射するため)体温を調整します。
優勢な雄のフトアゴヒゲトカゲは、より高いバスキングの場所を好む傾向があり、これはグループ内での優位性を示すためです。高い位置から、優勢な雄は食べ物、ライバルの雄、潜在的な捕食者を探します。もしライバルの雄が優勢な雄の縄張りに近づくと、優勢な雄は高い場所から急いで降りてきて、口を開き、ヒゲを膨らませ、フーッという音を立てて威嚇します。この行動は、ライバルの雄を従順な姿勢にさせ、階層を認識させるのに十分です。
フトアゴヒゲトカゲは日光浴をしすぎて体が過熱することがありますが、お気に入りのバスキングスポットを離れる代わりに、口を開けて蒸発冷却で体温を下げます。
寒い冬の間、食べ物が十分に手に入らず気温も理想的でない場合、フトアゴヒゲトカゲは数週間の冬眠期(ブルーメーション)を過ごします。彼らは巣穴に引きこもり、ほとんど食べず、時々水を飲むだけになります。この冬眠の期間は、春における交配と繁殖プロセスに必要なホルモン変化を誘発するためにも重要です。
フトアゴヒゲトカゲは通常春、9月から11月にかけて繁殖します。交配から4〜6週間後、雌のフトアゴヒゲトカゲは16〜30個の卵を産み、卵を産むシーズン中にこれを3〜4回繰り返すことがあります。雌のフトアゴヒゲトカゲは、遅延受精または「アムフィゴニア・リタルダータ」というユニークな能力を持っており、1回の交配で得た精子を保存し、その後の卵を交配なしで受精させることができます。
フトアゴヒゲトカゲは雑食性のトカゲであり、多様な無脊椎動物、植物、果物、さらには他のトカゲのような脊椎動物までを食べます。
オーストラリアの季節は北半球のそれとは反対です。春の間、9月から11月にかけての平均気温は24〜28°Cであり、夏には12月から2月にかけて30〜34°Cに達します。秋は3月から5月までで、平均気温は18〜24°Cで徐々に冷えていき、冬は6月から8月までで、平均気温は14〜22°Cです。
テラリウムでは
フトアゴヒゲトカゲは地上生活から半樹上生活を営み、テラリウム内では高い場所で日光浴をし、地面で食べ物を探し、巣穴や洞窟に隠れることができます。このため、フトアゴヒゲトカゲには水平方向に配置されたテラリウムが最適です。テラリウムの内部デザインには、フトアゴヒゲトカゲが日光浴を楽しめるような高台をうまく取り入れると良いでしょう。
フトアゴヒゲトカゲは温和な性格を持っており、1匹もしくは1匹のオスと最大3匹のメスからなる小さなグループで飼うこともできます。小さなグループ内での個体間の相互作用、例えば頭を上下に振る動作(優位性を反映)や腕を振る動作(服従や威嚇を反映)、さらにはコオロギを追いかける餌の争奪戦などは、観察の楽しさを増し、フトアゴヒゲトカゲの自然な行動と交尾行動を刺激します。

飼育ケージ
Exo Terra® グラステラリウムは、ヨーロッパの爬虫類学者が設計したもので、フトアゴヒゲトカゲの飼育に適した多様なオプションを提供しています。このガラス製のケージは正面に観音扉を備えており、メンテナンスや給餌が容易で、独自の二重換気システムと全面ステンレス製のトップカバーが備わっています。全面ステンレス製のトップカバーは、UVBライトからの紫外線がテラリウムの奥深くまで届くように設計されています。また、トップカバーの背面には、電源コードやチューブ類を隙間なく完全に収納できるコード穴が両側に5つ設けられています。
Exo Terra® グラステラリウムの6030、6045、9030、9045は、良好な通気性と十分な床面スペースを提供し、フトアゴヒゲトカゲの孵化直後や若齢期のグループを育てるのに適しています。また、1匹の成体のフトアゴヒゲトカゲの雄と1匹の成体の雌のグループを維持するのにも適しています。
RECOMMENDED TERRARIUMS | Animals | サイズ W × D × H |
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グラステラリウム6030 PT2604 | 幼体~成体 | 61.5 × 46.5 × 33 cm |
グラステラリウム6045 PT2610 | 幼体~成体 | 61.5 × 46.5 × 47.5 cm |
グラステラリウム9030 PT2611 | 成体 | 91.5 × 46.5 × 33 m |
グラステラリウム9045 PT2613 | 成体 | 91.5 × 46.5 × 47.5 cm |
テラリウムのセットアップには、Exo Terra®の床材、ウォーターディッシュ、または他の装飾的なExo Terra®のシェルターを使った「シンプルなセットアップ」や、テラメイカー デザート レッド を使って、涼しく湿度のある巣穴と温かい高台の日光浴エリアを含む砂漠やサバンナの風景を再現する「バイオアクティブタイプのセットアップ」があります。
フトアゴヒゲトカゲ用の飼育キットには、飼育するために必要な用品が含まれています。
オスのフトアゴヒゲトカゲを1つのケージで2匹一緒に飼育しないでください。彼らは非常に縄張り意識が高く、争いを引き起こす可能性があります。
※ケージは、窓から間接光のみが入る部屋に設置してください。ケージを窓の近くに置かないでください。直射日光が当たるとケージが過剰に熱くなり、フトアゴヒゲトカゲにストレスを与えたり死に至らせる可能性があります。
照明
フトアゴヒゲトカゲは主に昼行性で、日中に活動する爬虫類です。フトアゴヒゲトカゲは日光を好む性質を持っているため、昼間は十分な可視光線、UVA、UVB、熱を提供する必要があります。適切なUVB照明は、フトアゴヒゲトカゲの健康にとって非常に重要です。
年間を通して健康に飼育するためには、12時間の昼夜サイクルが適切です。より自然なアプローチとして、繁殖を誘発するためには、夏の間は14時間の昼光と10時間の夜時間を提供し、冬の間は昼光サイクルを10時間の昼光と14時間の夜時間に減少させると良いでしょう。
フトアゴヒゲトカゲに質の高い照明を提供するためのさまざまな用品があります。例えば、Exo Terra® ソーラーグローのようなオールインワン電球を使用することで、UVA、UVB、可視光線、熱をすべて1つの電球で提供できます。また、Exo Terra®レプタイルUVB150とサングロータイトビームバスキング スポットランプの組み合わせを使用する方法もあります。
フトアゴヒゲトカゲに適切なバスキングスペースを提供することが非常に重要です。このスペースは、光と熱、UVBを組み合わせたものでなければなりません。正しいUVB波長は、プロビタミンD₃(7-デヒドロコレステロール)がプレビタミンD₃に変換されます。プレビタミンD₃が形成されると、熱線が適切な温度を提供し、これがサーマルアイソメリゼーションによってビタミンD₃に変換されます。光、熱、UVBの組み合わせがなければ、フトアゴヒゲトカゲは食物からカルシウムを吸収するために必要なビタミンD₃を生成することができません。飼育された爬虫類における主要な食事問題は、日々の食事からのカルシウムの吸収が低いことです。カルシウムは、骨の成長と維持、筋肉機能、および体内の多くの重要な代謝機能にとって不可欠です。
保温
フトアゴヒゲトカゲは変温動物であり、環境内で暖かい場所と涼しい場所を移動しながら体温を調整します。これを考慮して、フトアゴヒゲトカゲのケージ内に温度勾配を造ることが推奨されます。
ケージの床の約3分の1を加熱し、残りの3分の2を涼しいままに保つために、一方の側にExo Terra® レプタイルヒートを設置することで温度勾配を作ることができます。理想的なフトアゴヒゲトカゲの昼間の温度勾配は、「涼しい場所」で28-30°C、「暖かい場所」で36-40°Cです。この温度勾配により、フトアゴヒゲトカゲは自分の体温を調整することができます。夜間の温度は、22-25°C程度に保つのが理想です。
※フトアゴヒゲトカゲが熱源に近づきすぎて火傷しないように常に注意してください。ケージを設置している部屋が家の中で寒い場所にあり、推奨される温度に達しない場合は、暖かいエリアの上に追加のサングロータイトビームバスキング スポットランプやヒートグロー赤外線照射スポット ランプ、ヒーティングトップを設置して温度を上昇させることが推奨されます。
ケージ内の暖かい側と涼しい側の両方に温度計を設置することで、希望する温度が正確に維持されているかをチェックすることができます。利用するケージのタイプや周囲の部屋の温度に応じて、レプタイルヒートのサイズを調整する必要があるかもしれません。
フトアゴヒゲトカゲの安全を保ち、ケージ内の正しい周囲温度を維持するため、タイマーサーモやイージーグローサーモの使用を推奨します。
観察
フトアゴヒゲトカゲは、「保温」セクションで説明されているように、昼夜を通して特定の温度範囲を必要とします。ケージ内の温度勾配を明確に把握するためには、2つのデジタルまたはアナログ温度計を使用するのがおすすめです。1つをテラリウムの涼しい側に、もう1つを暖かい側に配置することで、爬虫類にとって望ましい温度を確認できます。
爬虫類が適切な温度を保てる最も安全な方法は、サーモスタットを使用することです。タイマーサーモやイージーグローサーモは、暑い夏の日や寒い冬の夜に過熱や過冷を防ぐのにも役立ち、爬虫類が適切な温度を維持できる、安全で制御された暖房システムを作り出すことができます。
床材
テラリウムのセットアップには、シンプルな「ステリル(清潔)タイプのセットアップ」とより自然な「バイオアクティブタイプのセットアップ」があります。
1.ステリル(清潔)タイプのセットアップ
デザートソイルは、特に孵化したばかりの個体や若齢のヒゲトカゲに便利な床材ですが、成体にも適しています。
2.バイオアクティブタイプのセットアップ
テラメイカー デザート レッドは、フトアゴヒゲトカゲが棲息する岩が多目な乾草地や砂漠地域の自然の土壌を模しています。テラメイカー デザート レッドを使用すると、涼しく湿度のある巣穴や温かい高台のバスキングエリアを含む、自分自身の砂漠やサバンナの風景を作り出すことができます。涼しく湿度のある巣穴は、フトアゴヒゲトカゲが皮膚を通じて必要な水分を吸収できるようにしながら、睡眠できる隠れる場所を提供できます。一方、温かい高台のバスキングエリアは、さまざまな重要な温度勾配を提供することで、フトアゴヒゲトカゲが体温を調節できるようにします。
テラメイカー デザート レッドを軽く湿らせて、自然な丘、巣穴、バスキングできる場所を爬虫類のために形作ります。一度乾燥すると、テラメイカー デザート レッドはその形を保ちつつも、フトアゴヒゲトカゲがさらに自然な掘り行動を実行できるようになります。また、テラメイカー デザート レッドは、枝や岩の形成など装飾アイテムを安全に固定するためにも使用できます。
植物
生きた植物と人工植物を組み合わせてテラリウムに加えることで、フトアゴヒゲトカゲが隠れたりくつろいだりできるスペースが増え、テラリウムの内装がより美しくなります。
多くの飼育者は、鉢植えの観葉植物を床材に埋め込み、コルクバークや石などで鉢を隠しています。Exo Terra®のL/XLサイズのウォーターディッシュも複数の植物を一度に植栽するのに使用できます。植物をウォーターディッシュに植えることで、フトアゴヒゲトカゲが植物を掘り起こしてしまうのを防ぐことができます。
※新しく植物を導入する前には、害虫がいないかよく確認し、葉よく水で洗い流してください。
人工植物を設置することで日陰を提供し、隠れ場所や視覚的な壁を作り出すことで、爬虫類や両生類に安心感を与え、ストレスを軽減できます。生きた植物と人工植物を組み合わせて使用することで、より安心できるレイアウトを作り出すことができます。
隠れ家
フトアゴヒゲトカゲが安心して隠れたり、夜間や日中の休憩時に寝ることができる安全なスペースを確保するためにも隠れ家を用意してあげてください。隠れ家は、フトアゴヒゲトカゲが登ったりバスキング(ひなたぼっこ)したりするのにも適しています。これによりフトアゴヒゲトカゲが効率よく体温調節できる理想的な環境になります。隠れ家内の湿度がテラリウムの平均湿度よりも多少高い(60-70%)状態を保つようにしてください。
複数のフトアゴヒゲトカゲを一つのケージで飼育する場合は、ストレスを防ぐために各個体用の隠れ家を確保するようにしてください。
装飾
テラリウムのレイアウトを工夫することで、フトアゴヒゲトカゲの自然な行動や好奇心を満たす行動を促すことができます。隠れ家や植物などの必須アイテムに加えて、装飾品を追加してテラリウムを美しく演出することも可能です。
ただし、テラリウム内のスペースが窮屈になりすぎないよう、装飾品の置き過ぎには注意しましょう。
小さなグループのフトアゴヒゲトカゲを飼育する予定がある場合は、各個体がそれぞれ休息エリアに退避できるよう、複数の隠れ場所を提供するようにしてください。
Exo Terra®のウォーターディッシュは、装飾的な植木鉢として使用することができ、フトアゴヒゲトカゲが多肉植物を掘り起こすのを防ぐことができます。
栄養
野生下のフトアゴヒゲトカゲは雑食性のトカゲであり、さまざまな昆虫、植物、果物、さらには他のトカゲなどの脊椎動物まで食べます。飼育下でも、フトアゴヒゲトカゲには多様な昆虫、野菜、果物を与えるのが望ましいです。
フトアゴヒゲトカゲの食事における昆虫と野菜の割合は、成長の段階によって変化します。1歳未満の幼体では、およそ70%を昆虫、30%を野菜とするバランスが理想的です。成長して成体になると、このバランスが逆転し、約70%を野菜、30%を昆虫とする内容に切り替えていきましょう。
フトアゴヒゲトカゲには、適切なサイズの生きた昆虫、または乾燥昆虫を与えてください。一般的には、昆虫の最大サイズはフトアゴヒゲトカゲの頭の幅と同じ程度が適切です。フトアゴヒゲトカゲの食事にはできるだけ多くの種類の昆虫を含め、必要な栄養素をすべて摂取できるようにしてください。生きた昆虫には、給餌の24-48時間前にリンゴのスライス、サツマイモ、オレンジ、シリアルやコオロギブースターなど栄養価の高いエサを与え、栄養を摂取させてから与えてください。
市販の昆虫はカルシウムやビタミン類が不足しがちなため、給餌前にマルチビタミンなどの爬虫類用ビタミン剤とカルシウム剤を1:1の割合でブレンドし、昆虫にまぶしてから与えるのがおすすめです。RepDeli コオロギブースターを給餌前に活餌に与えるのも効果的です。
Exo Terra®は、フトアゴヒゲトカゲなどの雑食性爬虫類のために特別に配合された魅力的な昆虫ベースのフードを提供しています。Exo Terra® フトアゴブレンドフードは、フトアゴヒゲトカゲやその他の昆虫を食べる雑食性爬虫類のための栄養豊富なフードです。このフードはフトアゴヒゲトカゲにとって非常においしく、高タンパクで、カルシウムとリンの比率が理想的であるという特長を持っています。また、自然の植物や果物の成分を含み、ミネラル、ビタミン、およびその他の微量栄養素で強化されていますので、健康的な食餌を確保できるようになっています。
また、毎日フトアゴヒゲトカゲに新鮮な野菜を提供してください。適した野菜には、チコリ、コラードグリーン(ケールの一種)&マスタードグリーン(からし菜の一種)、カブの葉、アルファルファ、たんぽぽの葉と花、クレソン、ハコベ、ハイビスカス、カレンデュラ、カエデの葉、ブドウの葉、オオバコ、スイカズラ、パプリカ、ズッキーニ、ニンジンなどがあります。また、パパイヤ、マンゴー、メロン、イチゴ、ブルーベリーなどの果物も与えれますが、これらは週の食事摂取量の5-10%を超えないように注意してください。バランスの取れた食事を提供し、繊維、ビタミン、ミネラルの量を増やすために、新鮮な野菜にExo Terra® フトアゴブレンドフードを混ぜることをお勧めします。
幼体には毎日、成体には一日おきに給餌します。
水分
フトアゴヒゲトカゲは比較的乾燥した地域に棲息していますが、常に清潔で新鮮な飲み水を提供することは非常に重要です。Exo Terra®ウォーターディッシュは、爬虫類の水皿として最適です。簡単に掃除や消毒ができるように設計されています。あまりにも大きなウォーターディッシュを使用すると、全体的な湿度が過度に上昇してしまうため注意が必要です。
また、ミネラルサポートスティックを溜めた水道水に入れることで、水道水の塩素を除去し、爬虫類に必要なカルシウム・マグネシウム等を水中に溶出します。フトアゴヒゲトカゲを健康で幸せに保つために、飲み水にミネラルサポートスティックを入れることで不足しがちなミネラル補給+水道水の塩素除去した水を与えてください。
メンテナンス
フトアゴヒゲトカゲは、他の多くのペットと比較して比較的メンテナンスが少ないため、飼育が容易です。毎日、ケージ内の温度をチェックし、排泄物を取り出し、水や食べ物の皿を掃除して新しい水、食べ物を入れてあげてください。
【毎日のルーティン】
- フトアゴヒゲトカゲの健康状態をチェックします。機敏に動いていますか?体重が減っていませんか?
- ケージ内の温度をチェックします。
- ウォーターディッシュを掃除し、清潔な新しい水を入れます。
- ケージ内のスポットクリーニングをします。糞便や汚れた床材、死んだ昆虫、食べ残した食べ物を取り除きます。
- 年齢に応じて、生きたビタミン/ミネラルをまぶした昆虫を毎日または隔日与えます。
- フードディッシュを掃除し、新鮮な野菜とフトアゴブレンドフードを与えます。
【毎週のルーティン】
- 汚れて硬くなった表面を取り除き、掃除します。
- 床材の汚れた箇所、臭う箇所を取り除き減った床材を補充します。
- ケージ内に生きた植物を植えている場合は、週に一度水をやります。
- ケージ内側のガラス面やデコレーションは、週に1~2回、水やテラリウムシートクリーナーなどを使って、フンや汚れを拭き取りましょう。
ブリーディング
フトアゴヒゲトカゲを一年を通して健康的に飼育するためには、1日12時間の昼夜サイクル(昼光時間と夜間時間)が適切です。 より自然な飼育環境に近づけたい場合や繁殖を促したい場合は、夏の間は昼を14時間、夜を10時間にし、反対に冬の間は昼を10時間、夜を14時間にするサイクルに調整する方法がおすすめです。
自然界では、フトアゴヒゲトカゲは毎年約1.5~2.5か月間のブルーメーション(軽い冬眠)サイクルがあります。フトアゴヒゲトカゲの繁殖が目的である場合は、この冬眠期間を再現する必要があります。昼時間を1日14時間から10時間に減らし、レプタイルヒートをオフにして温度を32°Cから21°Cに引き下げます。この冬眠期間中、フトアゴヒゲトカゲは食欲が減少し、水をあまり飲まず、活動も鈍くなります。1.5~2.5か月後に昼夜サイクルを逆にして、昼間の時間を通常の12~14時間に戻し、ヒーターを再びオンにします。オスと少なくとも1匹のメスのフトアゴヒゲトカゲを1つのケージに一緒に飼育する場合、このブルーメーションサイクルはフトアゴヒゲトカゲの繁殖行動を誘発します。交尾後4~6週間でメスのフトアゴヒゲトカゲは16~30個の卵を産みます。産卵シーズン中は産卵行動を最大3~4回繰り返すことがあります。
メスが卵を産むために、湿らせた水苔やその他の水分保持基材の層を用いて湿った隠れ家を必ず用意してください。産卵場所から卵を取り除く際には、卵の向きを保ち、上面が上になるように移動させてください。インキュベーターに卵を入れる前に、最低24時間稼働させて温度をチェックしてください。フトアゴヒゲトカゲの卵は26°Cから32°Cの温度で孵化しますが、29°Cが最も一般的な孵化温度です。
フトアゴヒゲトカゲは、基本的には「温度依存性決定(TSD)」の影響を受けないとされています。ただし卵の孵化温度が約32~36℃と非常に高い場合には、メスの比率が増える(性比が偏る)ことが報告されています。
しかし、この高温で生まれたメスは「遺伝子的にはオスでありながら、外見的・生理的にはメスになる」という 性転換(性逆転) を起こしている個体とされ、実際の飼育や繁殖においては推奨されていません。高温下での孵化は母体や次世代への影響(健康リスクなど)を伴う可能性も指摘されているため、設定するインキュベーターの温度には十分な注意が必要です。
孵化期間は50日から80日で、平均約60日です。涼しい温度では最長の孵化期間、暖かい温度では最短の孵化期間となります。
産卵期のフトアゴヒゲトカゲに生きた昆虫を与える際には、十分なカルシウムとマルチビタミンを提供するようにしてください。
ハンドリング
フトアゴヒゲトカゲは比較的ハンドリング(触れ合い)に慣れやすい種類ですが、フトアゴヒゲトカゲが安心して過ごせるように、過度に触ることはおすすめしません。 特に、孵化したばかりの幼体や若いフトアゴヒゲトカゲは、長時間持ち上げられることで不安やストレスを感じてしまう場合があるので、優しく接しましょう。
フトアゴヒゲトカゲに近づくときは、必ず上から手を出さないようにしてください。上から近づくと、フトアゴヒゲトカゲが天敵に襲われると勘違いしてパニックになってしまう場合があります。動作はゆっくり、やさしく行いましょう。しっぽや手足を持って持ち上げるのは絶対にやめましょう。また、フトアゴヒゲトカゲが食事をしている時は、ハンドリングを控えてください。
ハンドリングを始める際には、フトアゴヒゲトカゲの前に手のひらを床につけてそっと差し出し、自分から手に乗ってくるのを待ちます。もう一方の手でエサとなる昆虫などを差し出すと、自然に手に乗ってきてくれることがあります。もし自分から乗ってこない場合は、やさしくおなかの下から手ですくうように持ち上げてください。このとき、できるだけ手や腕で全身(しっぽや手足まで)をしっかり支えるようにしましょう。
ハンドリング中、フトアゴヒゲトカゲが頻繁に舌を出して周囲を舐める動作が見られることがあります。これは、においや味を確かめて環境に慣れようとする自然な行動ですので心配はいりません。
フトアゴヒゲトカゲが落ち着いている間は、ハンドリングを続けても大丈夫ですが、そわそわしたり、落ち着きをなくした様子があれば、すぐに飼育ケージに戻してあげてください。
特に幼い個体は活発で、急に手から走り出したりジャンプしたりすることがあるため、十分ご注意ください。
まとめ
フトアゴヒゲトカゲは、比較的小型でおとなしい性格、そして人とふれあうことが好きな一面もあるため、初心者の方やベテランの愛好家、子供にも人気の高いペットとして知られています。
夜行性の生き物とは異なり、フトアゴヒゲトカゲは日中に活動するため、観察やふれあいを日中に楽しむことができるのも大きな魅力のひとつです。
また、現在では多くの爬虫類ショップで飼育下繁殖されたフトアゴヒゲトカゲを入手できることや、さまざまなカラーや模様のモルフが存在することも、人気の理由となっています。

知っていますか?
フトアゴヒゲトカゲは原産国であるオーストラリアではとても一般的なトカゲであり、そのためIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで「LC(軽度懸念)」=絶滅の心配が少ない種に分類されています。現在市場で流通しているフトアゴヒゲトカゲは、すべて飼育下で繁殖された個体です。
オスのフトアゴヒゲトカゲは、優位性を示す際やメスにアピールする際、「ヒゲ」と呼ばれる部分を黒く変色させたり、頭を上下に振る(ヘッドボビング)行動を見せます。これは、体の大きなオスが小さなオスや若いオスに対して優位性を示すときや、メスへの求愛時によく見られます。
一方でメスのフトアゴヒゲトカゲは、オスの求愛行動に応える際、片腕をゆっくりと振る独特のジェスチャー(アームウェービング)を見せることがあります。これは交尾の準備ができているサインです。
フトアゴヒゲトカゲは、体温を自分で調節するために、暖かい場所と涼しい場所を行き来します。さらに、体の色を濃いグレーやブラウンにして熱を吸収しやすくしたり、逆に薄い色にして太陽光を反射して体温の上昇を抑えたりすることができます。
また、野生のフトアゴヒゲトカゲは天敵に襲われたとき、素早く逃げるために、2本の足で立ち上がり走ることができる習性もあります。
よくある質問
フトアゴヒゲトカゲはとても魅力的な動物です。丈夫で長生きし、お世話もしやすいことが特徴です。さらに、さまざまな色や模様のバリエーションがあるのも大きな魅力のひとつです。
フトアゴヒゲトカゲは比較的体が小さく、触れ合いにもよく慣れてくれます。そのため、爬虫類の飼育がはじめての方から愛好家の方、子供にも人気があります。
また、夜行性の爬虫類とは違い、フトアゴヒゲトカゲは日中に活動するため、観察したりふれあったりしやすい点も大きなメリットです。
野生で採取した昆虫をフトアゴヒゲトカゲに与えることはおすすめできません。野生の昆虫には有害な細菌が付着していることがあり、また、農薬などの化学薬品が付着している場合もあります。こうした昆虫はフトアゴヒゲトカゲにとって有害となる可能性がありますので、必ず市販されている安全な餌用昆虫を与えるようにしてください。
フトアゴヒゲトカゲの食事には、できるだけ多くのバリエーションを持たせることで、必要な栄養素をすべて摂取できるようにしましょう。Exo Terraのフトアゴブレンドフードを使えば、必要な栄養素をすべて摂取させることができます。
フトアゴヒゲトカゲにとって、適切なUVB照明は不可欠です。適切なUVB照射がないと、フトアゴヒゲトカゲは餌や交尾相手などの色を判断できません。適切なUVB照明を提供することの最も重要な理由は、代謝性骨疾患などの代謝性疾患を予防することです。
フトアゴヒゲトカゲは人間に対してはとても穏やかでおとなしいのですが、他の爬虫類には寛容ではありません。ですから、フトアゴヒゲトカゲと他の爬虫類を一緒に飼育することは控えください。