「夜行性の爬虫類にはUVBは必要ない」という考え方は、爬虫類や両生類の飼育において長い間一般的で、多くの愛好家やブリーダーの間で根強く支持されてきたものです。
しかし、近年の科学的研究によって、こうした従来の常識に変化が起こっています。活動パターンに関わらず、すべての生体にとってUVBが重要であることが明らかになってきました。
クレステッドゲッコー、ヒョウモントカゲモドキ、コーンスネークといった夜行性・薄明薄暮性の爬虫類は、この議論の中心的な存在です。
最近の研究では、これらの爬虫類をはじめとする複数の種で、UVB照射によるビタミンD3の合成量の促進の相互関係が認められてきています。
ビタミンD3はカルシウム代謝において重要な役割を果たしており、骨の健康と全体的な健康状態にとって不可欠であるため、この発見は大きな意味を持ちます。
科学的調査結果をさらに掘り下げてみましょう。
ビルマニシキヘビ(Python bivittatus):
夜行性として知られるこの美しいヘビたちは、日中はほとんど隠れて過ごしています。
ところが今回の調査では、適度なUVB照射を行ったところ、ビタミンD3合成量が顕著に増加することがわかりました。
つまり、野生下でも短い日中の活動時間や、寝ぐらに差し込むわずかなUVBでも、彼らは上手に恩恵を受けている可能性が出てきました。
ヒョウモントカゲモドキ(Eublepharis macularius):
アジアの乾燥地帯を原産地とするヒョウモントカゲモドキは、夜明けと夕暮れの時間帯に最も活動する「薄明薄暮性」のヤモリです。
野生では直射日光を浴びる機会が限られているにも関わらず、UVB照射を取り入れることでビタミンD3の合成量がしっかりと増え、食欲や免疫力の向上にもいい影響があることが明らかになりました。
コーンスネーク(Pantherophis guttatus):
北米原産のコーンスネークは、日中の涼しい時間帯や夜に活動的になります。
調査の結果、他の種と同様に、UVB照射によりビタミンD3合成が改善され、食欲が向上することが確認できました。
トッケイヤモリ(Gekko gecko):
鮮やかな青とオレンジの体色が目を引くトッケイヤモリは、東南アジアの熱帯雨林が原産地。夜行性で特徴的な鳴き声と攻撃的な性格で知られています。
最近の研究では、主に夜に活動しているにもかかわらず、UVB照射によって健康状態や活力が高まる可能性があることが示されています。
二シアフリカトカゲモドキ(Hemitheconyx caudicinctus):
西アフリカ原産の二シアフリカトカゲモドキは、乾燥した地域で暮らす夜行性のヤモリです。
野生では直射日光を浴びる機会がないのですが、飼育下でのUVB照射で、ビタミンD3の合成を助けて健康のサポートにもつながることが分かってきました。
クレステッドゲッコー(Correlophus ciliatus)
ニューカレドニア原産のクレステッドゲッコーは、独特な外見とおだやかな性格で人気の爬虫類です。
夜行性で、特殊な足指のパッドを使って上手に移動します。
他の夜行性ヤモリと同様に、UVB照射することでビタミンD3の合成や免疫力のサポートにつながることがわかってきています。
これらの研究結果は、多くの爬虫類愛好家が長年信じてきた常識に議論を投げかけるものです。
生きものたちはそれぞれの棲息環境に適応して進化してきましたが、その環境にもUVBが存在しないわけではありません。たとえ直接日光を浴びる時間が少なくても、周囲の環境から受けるわずかなUVBでも健康に影響を与える可能性があるのです。
飼育下での生活は野生下とは大きく異なります。人工的にコントロールされた環境は多くのメリットがある一方で、野生の中で自然に得られていた大切な要素が不足してしまうこともあります。そのため、夜行性や薄明薄暮性の爬虫類にもUVBライトを設置することで、野生で体験する本来の光環境に近づける必要があると考えられています。
夜行性の爬虫類にUVBを与える必要はない。という従来の考え方は、現在の科学的知見では時代遅れになりつつあります。
研究が進み、爬虫類たちへの理解が深まるにつれて、「すべての爬虫類に同じ飼育方法を当てはめる」ことは適切ではないとわかってきました。
それぞれの種には固有のニーズがあり、活動パターンに関係なく最適な環境作りが求められます。
夜行性や薄明薄暮性の爬虫類においても、「UVB=ビタミンD3の合成促進」という相関が明らかになってきたことは、科学が進化し続けている証です。

Exo Terra ブランドマネージャー
「夜行性の爬虫類にUVBを与える必要はない。という従来の考え方は、現在の科学的知見では時代遅れになりつつあります。」

