「レユニオンヒルヤモリ」(学名:Phelsuma borbonica)は、中型で色鮮やかな体を持つ美しいヤモリで、レユニオン島の豊かな自然環境の中でその命を輝かせています。このヤモリは、気候変化や環境の変化に適応する驚くべきたくましさを示しながら、人々に自然の豊かさと、それが抱える脆さを気づかせてくれる存在です。
レユニオンヒルヤモリには、2つの亜種があり、それぞれ島の異なる地域に棲息しています。
第一亜種であるPhelsuma borbonica borboniaは、島の北部および東部に主に棲息し、豊かで湿度の高い熱帯環境に適応しています。
第二亜種であるPhelsuma borbonica materは、主にレユニオン島南東部に棲息し、この地域特有の生態条件に適応しています。この分布は、ヤモリの驚異的な適応力と、島が提供する多様な棲息環境を反映しています。

Phelsuma borbonica borbonica サント・ローズ高地、東レユニオン
彼らの世界をそっと覗いてみよう
レユニオンヒルヤモリは、中型のヤモリで、大人になると体長が18cmほどになります。幼体のときは6cmにも満たない小さな体です。体の色は、明るいリンゴのような緑色から、深い青みがかった色までさまざまで、体全体に赤い斑点がつながるように広がっています。この美しい姿は、緑豊かなレユニオン島の中でもとても目立ちます。
このヤモリは昼間に活動し、太陽の光を浴びながら過ごすことを好みます。夕方になると、木や岩のすき間など安全な場所に隠れます。
普段は木の上で過ごしていますが、ときどき岩場に出てくることもあり、いろいろな環境に適応できる力を持っています。
メスは白くて硬い殻の卵を2つ産みます。卵は自然の中の守られた場所にしっかりくっつけて産みつけます。その卵は何十年も持ちこたえることがあり、これらの生き物が持つ強靭さと生命力の高さを物語っています。
レユニオンヒルヤモリは、さまざまな生きものと環境のつながりを分かりやすく教えてくれる存在です。このヤモリは、レユニオン島の特別な⾃然環境に強く結びついて⽣きています。レユニオン島はこのヤモリにとって安⼼できる場所であるとともに生き抜くためのさまざまな試練ももたらしています。
レユニオン島は、火山が生み出したさまざまな地形や気候により、多彩な自然の風景が広がっています。海に近い低い場所の草原や林から、山の中腹にある熱帯雨林、さらには標高2000メートルを越える山の森林など、その土地ごとにヤモリの生活に合った環境が用意されています。
低い場所や海に近いエリアでは、少し乾いた林や熱帯の森が広がり、ほどよく茂った植物が食べ物や隠れ場所を与えてくれます。しかし、こうした場所は農業や町づくりなど人の手が入ってしまい、ヤモリの棲む場所が少なくなっているという問題があります。
標高750~1100メートルくらいの間には、「移行帯」と呼ばれる森があります。ここは低地と山地、それぞれの特徴が混ざり合ったエリアで、自然が比較的よく残っています。ヤモリにとっては自由に動いたり、仲間との多様性を保ったりするための大切な場所です。
さらに1500メートル以上の高い場所に行くと、断崖やごつごつした岩場、そして火山の浸食でできた「サーク」や「ランパール」と呼ばれる特別な地形があります。こういった自然がそのまま残っている場所は、ヤモリたちにとって安全な隠れ家や産卵場所となっています。
このように、レユニオン島では標高や環境によってさまざまな自然が広がり、それぞれがつながり合いながら、この島にしかいないヤモリたちの命を支えています。
レユニオンヒルヤモリの保全の課題
レユニオンヒルヤモリは、IUCNレッドリストで「絶滅危惧種」とされており、その生き残りには大きな心配が寄せられています。人の暮らしや外からやってきた生きものの影響で、棲む場所が細かく分かれ、厳しい状況に直面しています。
最近の研究により、このヤモリがどんな場所で、どのように暮らしているのか少しずつ分かってきていますが、島の中にはまだ調べられていない地域も多く、すべてを理解するにはもう少し時間がかかりそうです。
このヤモリは、島のいろいろな環境で暮らしているため、それぞれの棲息地に合わせた工夫や守るための取り組みが大切です。こうした保全活動は、レユニオンヒルヤモリだけでなく、島に棲む多くの生きものたちにとっても役立ちます。
さらに、外来種による生態系への影響を減らすための対策も、このヤモリたちの未来を守るためには欠かせません。

レユニオンヒルヤモリ ボワ・ブラン地域、東部レユニオン
レユニオンヒルヤモリは、レユニオン島の生態系の多様性と自然の美しさを象徴しています。さまざまな変化に直面するなかで、このヤモリのたくましさは、私たちに自然との繊細なバランスの大切さを思い出させてくれます。レユニオンヒルヤモリをこれからも守り続けるために、私たち一人ひとりができることを考えていきましょう。

レユニオン島のタカマカ渓谷と山々

Exo Terra
ブランドマネージャー

Phelsuma borbonica mater バスヴァレ地域、南レユニオン

低地森林におけるレユニオンヒルヤモリの典型的な棲息地

Phelsuma borbonica borbonica レ ブリュレ地域、北部レユニオン

Phelsuma borbonica borbonica フォレ・デュ・クラテール地域、東部レユニオン

Phelsuma borbonica mater バス・ヴァレ地域、東部レユニオン