パルダリウムという言葉は、ラテン語の「palus(沼)」に由来します。パルダリウムは半水棲のテラリウム環境であり、熱帯雨林や沼地、小川などの自然環境を再現し、水棲と陸棲の動植物のいずれも飼育することができます。パルダリウムは、陸と水の“いいとこ取り”ができるのが特徴です。底部が通常より深く設計されているため、水辺やアクアリウム部分を十分に作り込むことができ、その隣に陸地やテラリウム部分を配置できます。
充分に設備が整ったパルダリウムは、まさに小さな閉鎖型エコシステムだと言えるでしょう。
水はすべての動物の生命において重要な役割を果たします。水は体温調節、栄養の摂取、老廃物の排出、体重や健康の維持などに欠かせません。さらに、多くの種はライフサイクルの特定の段階、例えば繁殖・産卵・発生(幼生期)・脱皮などの際に、短期間または長期間、水の存在を必要とします。野生では、季節的な洪水や激しいモンスーンによる降雨などが、生存に必要な環境をもたらしています。十分な期間、水が確保できなければ、多くの動物は生存できず、または繁殖できなくなります。
パルダリウムは、「陸域」「水辺域」「水域」という三つの異なるゾーンの本質を写し取り、それぞれが自然界の異なる側面を映し出す、独自で生命力あふれる生態系です。
- 1.陸域(Terrestrial zone):このゾーンは、熱帯環境の陸地部分を再現しており、多様な無脊椎動物や爬虫類、両生類が棲息しています。このエリアは水中に沈むことがなく、さまざまな植物や樹木、低木、岩が配置されており、さまざまな種にとっての活動場を作り出します。
- 2.水辺域(Riparian zone):水辺域、または河岸ゾーンは、陸地と水域の間にある移行エリアで、半水棲の爬虫類や両生類にとって理想的な環境を提供します。ここでは、2つの異なる棲息環境が交わる場所で生命が豊かに営まれています。
- 3.水域(Aquatic zone):水域は、小川や池、時には湖などの水場を再現しており、カメや水棲両生類、魚、淡水エビなどの自然なすみかとなります。
陸域および水辺域を構築するには、排水性の高い床材と排水用メッシュ素材の使用が必要です。その上にソイルなどを重ね、落ち葉やコケで装飾します。
陸域(Terrestrial zone)は、植物や枝、つる、岩、隠れ家などを使って、美しく演出することができます。水辺域(Riparian zone)はややオープンな構造にして、小さな小石や平らな木片、石などを配置し、水域(Aquatic zone)へのアクセスをしやすくします。
機能的なパルダリウムは、(半)水棲生物を健康に飼育するために常に清潔な水の供給が不可欠です。パルダリウムの水辺エリアには、フィルター、ポンプ、ヒーターなどの水棲機器を設置します。水棲セクションの大部分は、陸地部分を支える「偽底」で構成することも可能です。偽底は水棲機器類を設置・隠すスペースとしても機能します。
フィルターポンプからの水は、テラリウム内で活きた植物やコケの生えるバックグラウンドを流れるように導いたり、滝をつくって水を水槽部へと徐々に戻すなど工夫しましょう。滝は美観を高めるだけでなく、水の酸素供給や生物ろ過の向上にも役立ちます。生きた植物や水苔もテラリウムのろ過能力に貢献します。このような設計により、自然界の生物ろ過プロセスを再現した効果的なろ過システムを作ることができます。
設備が整ったパルダリウムは、小さな閉鎖型エコシステムになります。
定期的に水質をチェックし、ろ過装置が効果的に機能しているか確認しましょう。部分的な水換えは、有害な物質を取り除いたり、水質全体を改善したりするのに役立ちます。特別な理由がない限り、全ての水を一度に交換しないようにしましょう。全換水をすると、有益なバクテリアや微生物まで取り除いてしまうためです。
パルダリウムで飼育できる動物は?
パルダリウムでは、さまざまな種類の爬虫類、両生類、魚類、無脊椎動物、植物を飼育することができます。小型の水棲ガメやバシリスク、ウォータードラゴン、アノール、イモリ、サラマンダー、カエル、小型魚など、流水域や半水棲の生きものはパルダリウムで元気に暮らすことができます。そのほかにも、ムツゴロウやカニ、エビ、カタツムリなども飼育可能です。

Exo Terra
コミュニケーションマネージャー
「水は、あらゆる自然の原動力である。」― レオナルド・ダ・ヴィンチ
